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執筆者の写真吉岡 俊史

親なきあとを考える④

親なきあとのことをつれづれに書かせていただいています。

4回目は、そもそも家族といえども、本人のことはある程度しかわからない・・という前提で、その家族なき後を考えてみたいと思います。


まずは本人の自活の力ですが、生活するという大きな課題に対して、本人ができる程度や持つ能力は、身近な人でもわからないときがあります。なぜか・・一つには本人との距離が近すぎて客観評価できない、というのもありますが、もう一つに、本人がやっている場面、経験しているところを見ていないから、というのもあります。


一人でバスに乗れますか?という問いに対して、「やったことが無いのでわからないですが、やればできると思う」というのと「やったことが無いです、地図は見たことがありませんが、バス停の識別はできます。時計は読めますが逆算は難しいです。時刻表は見たことがありませんが、表や絵から目的のものを探すことは好きです。財布は自分で持ちあるいています。乗り物は好きです」では、後者の方が、自立へ道筋がつけやすくなります。


わかる前に身近な方が代行してしまうことで、本人の持っている力が隠れてしまうのもあります。家族としては、いつも、今の場面場面を無事に進めることを優先するので、つい代行するのは当然のことかと思います。そのことに対しては誰も異論を唱えられないと思います。せめて、本人が家族のやっていることを横から見て、興味や関心を持てるようになれば、見ているだけでも力が身につくということも期待できるのです。

他の人や社会に対して、本人はどの程度興味や関心を持っているかがわかると、自立生活の仕方のヒントになります。


それによって、家族なきあとに、本人が0から出発するのか、1からなのかの違いが出てくるのです。

就職も同様で、ユースターでは、人によってですが、就職前から他の人の就職活動を見ていただく、ということも大事な支援としています。


家族なきあとを考える際、将来を想像して不安を抱くのではなく、(ちょっとしたことですが)家族や親が健在でいるときから「なきもの」とした場合の本人を観察・見守ることができれば、本人の生活力が現実的なものとして見えやすくなるのではないでしょうか。。。

繰り返しですが、親がいない状態に近いように(生前逝去のようなイメージ?)しておくこと、そして、なによりも『本人を観察すること』で、本人が何に困るかを下調べしておきたいものです。


就労移行支援事業所ユースターでは、就職前後に一人生活を始めたり、グループホームに入居する、というご相談を多く受けます。

ユースターとしても家族から自立して生活することを推奨します。

個々に状況は異なりますが、漠然とした不安や不明点が、自立することで家族だけではなく、本人にとっても晴れることがあるからです。


完全に不安がなくなるわけではありませんが、本人なりの生活が始まると、そこで家族との距離ができ、お互いに支えやすくなる場合もあるからです。

このシリーズで何度かお伝えしているように、「家族は本人の代行をやりすぎない、本人は家族に頼りすぎない」ということを示唆的に言っていても突破できませんので、何よりリアルな環境、状況を設定することが方法としてありかもしれません。


ありきたりですが、育てる、信じてやらせる・・・ということが、実利的なのかと思います。


二人で歩いている様子
親あるときに距離を取るのは難しいですが・・



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